寧鍼院(ねいしんいん)|大阪府高槻市芥川町の鍼専門院
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2025.12.09

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なぜ、冷え症は改善しにくいのか?

冷え症とは


「冷え症」とは、身体の各部位に冷えによる症状が生じている状態をいいます。

今も昔も、冷えに悩んでいる方は非常に多いといわれており、当院でも立冬(りっとう)といわれる11月初旬から冷えによる不調を訴えられる方の割合が増えています。

「冷え症」は西洋医学には無い、東洋医学独自の概念であり、冷えによる病の性質(病証)を指します。
これは、東洋医学が冷えそのものを治療の対象とみなしていることを意味しています。

「冷えは万病のもと」といわれるように、身体の冷えは心身に以下のように様々な影響を及ぼしています。

・身体各部の痛みやこり
・自律神経のバランスの乱れ
・生理痛や生理不順
・不眠、気分の落ち込み など


「冷えのぼせ」になると厄介


冷え症が厄介なのは重症化すると「のぼせ」の症状を併発する、いわゆる「冷えのぼせ」という状態へ移行することです。
「冷えのぼせ」になると、冷えによる症状と熱による症状が同時に出現することになります。

西洋医学には「冷えのぼせ」という概念はないため、東洋医学の側面からご説明させていただきます。

東洋医学の健康概念のひとつに「頭寒足熱」(ずかんそくねつ)という言葉がありますが、これは頭側が冷えて、足側が熱い状態をいいます。
身体の気の流れが正常であれば、このような状態となるため「頭寒足熱」を保つことが健康維持につながるとされています。

「冷えのぼせ」は、「頭寒足熱」とは逆に、頭側が熱くて、足側が冷たい「頭熱足寒」(ずねつそくかん)という状態になります。

熱と冷えの複合的な病症であるため、熱から生じる頭痛や肩こり、冷えから生じる足腰の冷えや重だるさといった「上熱下寒(じょうねつげかん)」といわれる状態が生じます。

さらに、気の乱れによって生じる「冷えと熱」が身体の各部位に波及することで、以下のような症状も発症させることがあります。

・更年期障害に類似の症状:肩こり、頭痛、めまい、耳鳴り、不眠、ホットフラッシュ

・原因不明の動悸、息切れ、呼吸が浅い

・喘息のような咳

・急な腹痛と下痢


一般的に、冷え症は、筋肉量が少なく、熱産生能力が低い女性の方が圧倒的に多いといわれています。
45歳~55歳ぐらいの女性は、冷え症に加えて、更年期障害の発症時期が重なるため、さらなる症状の悪化を招きやすくなります。

また、夏場の冷房による冷え、運動不足、就寝前のスマホの使用といった生活習慣の変化から、近年は20歳代の女性にも上記のような症状を訴えられることが増えています。


冷え症の改善が難しい本質的な理由


冷え症に悩まれる方は非常に多いとされているため、その改善方法は、テレビや雑誌、WEBサイト、SNSなどさまざまな媒体で紹介されています。
一般的には、以下のような方法が紹介されています。

・ウォーキングやストレッチなどの運動
・38〜40℃くらいのお湯に15~20分間入浴する
・お風呂上りのマッサージ
・就寝30分前にはスマホの利用を控える
・生姜、根菜など身体を温めるものを食べる

しかし、これらの方法を継続していくことは、なかなか難しいのではないかと考えています。

実際、続けようと思って頑張っても、途中で諦めてしまった方も多いのではないでしょうか?

その理由を探るには、冷え症に悩まれている方の傾向を理解する必要があります。
冷え症の方には以下のような体質・性質的な傾向があります。

・疲れやすく、倦怠感がある

・体力がなく、持続力が低い

・夜間に微熱や咳が出る

・風邪を引いても治りにくい

・ストレスを感じても我慢してしまう、自分で抱え込んでしまう

これらのことからも、冷え症の方は根本的に体力や生命力そのものが低いため、運動・入浴などの生活習慣を変えるだけのエネルギーが不足していることが伺えます。
性格的にも、無意識に周囲に気を遣ったり、悩みを溜め込んでしまう方が多いです。

また、現代はストレス社会といわれるように、職場・学校・家庭内での人間関係、過重労働、将来への不安、SNSを通じた他者との比較や情報過多など心理的・社会的なストレス要因が増大しています。

これまで冷え症を何とかしようと試みても上手くいかなかった方にお伝えしたいことは、

「上手くいかなかったことは、あなたの意思の強さの問題ではない。継続できないのではなく、継続できる心身の状態・環境ではないことが本質的にある」ということです。

したがって、まずは継続できる心身の土台を作っていくこと重要となります。

良き家を建てるには土台となる基礎工事をしっかり行うことが前提となるように、冷え症の改善には運動や生活習慣を継続できるような体質の改善から始めていくことが必要であると考えています。

今回のポイント

・冷え症は東洋医学独自の概念であり、治療の対象である。
・「冷えのぼせ」に移行すれば、さらなる症状の悪化を招いてしまう。
・冷え症の改善には、土台となる体質の改善からアプローチすることが必要となる。


今回は、冷え症の症状、冷え体質の方の傾向、その改善の難しさについてご説明させていただきました。

当院は体質という土台の改善には、東洋医学に基づく鍼灸が最も適していると考えています。

そのため、次回は西洋医学の冷えに対する視点と比較しながら、「冷え症の改善には東洋医学が有効である理由」について述べていく予定です。

ここまでご覧いただきありがとうございました。
それでは、次回もよろしくお願いします。

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