寧鍼院(ねいしんいん)|大阪府高槻市芥川町の鍼専門院
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2025.09.26

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看護師から鍼灸師になった理由(前編)

今回のテーマは内容が長くなるため、前編・後編に分けさせていただきます。

時折、患者さんから「なぜ、看護師を辞めて鍼灸師になったのですか?」と聞かれることがあります。
看護師という現代医学の臨床現場で働いていた人間が、なぜ、東洋医学という古典的な治療技術を選んだのか…


看護師としての想いと現実

ご説明にあたり、私個人の経歴を少しご紹介させていただきます。

私は鍼灸師になる前は、約7年半の間、総合病院にて看護師として勤務していました。
病棟看護師として、整形外科病棟、循環器・呼吸器内科病棟、血管造影室、HCU(高度治療室)の順に配属されていました。

担当病棟が運動器系から生活習慣に関連する循環器・呼吸器系に移行するにつれ、

・生命に直結する急性期
・リハビリを中心とした回復期
・徐々に寛解と増悪を繰り返していく慢性期
・余命の過ごし方が問われる終末期

というすべての病状の進行過程を経験するようになりました。

日々の看護業務を通して、ある一定レベルまで状態が悪化してしまうと、治療を受けて回復しても身体へのダメージは残り、本人が満足するレベルの日常生活を送ることが徐々に難しくなっていくという現実と向き合っていました。

そのような中で、
「もっと前にアプローチ出来ていれば、このような状態にまでならなかったのでは…」
「今の状態を緩和出来れば、もっと楽に生活ができるのでは…」
といった想いを抱かずにはいられませんでした。

しかし、日々の受け持ち患者数は多く、業務内容も多岐にわたっており、時間内にそのような予防のための援助を行うことは現実的に不可能でした。


新型コロナウイルス感染症

そして、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックが訪れました。

緊急事態宣言が出された2020~2021年にかけて、私はHCU(高度治療室)に配属されており、防護服に身を包みながら新型コロナウイルスに罹患された方の看護にあたっていました。

多くの医療従事者が未知のウイルスとの戦いを強いられました。先の見えない不安や恐怖はありましたが、当時最も辛かったことは、一般的な肺炎であれば亡くならないであろう方が亡くなってしまう事でした…

呼吸状態の悪化により、ICU(集中治療室)やHCU(高度治療室)での治療が必要となるケースでは、生命維持のため人工呼吸器が装着される場合がほとんどです。

一般的には知られていないことですが、人工呼吸器は呼吸を補助するためのものであり、肺の状態を良くするものではありません。むしろ長期の装着は肺を悪化させます。
したがって、人工呼吸器は早期に装着するものではなく、呼吸状態が悪化した場合の最終手段と位置付けられています。

何が肺の状態を治すのかといえば、抗菌薬や抗ウイルス薬といった薬剤です。これが効かなければ回復の見込みはほぼありません。
当時は有効な治療方法も確立されておらず、抗ウイルス薬の投与も著効を及ぼすものではありませんでした。

人工呼吸器の装着は患者さんとって筆舌に尽くしがたい苦痛を与えるものです。しかも、挿管チューブの自己抜去を防ぐために患者さんの四肢を拘束することもあります。
鎮静薬や鎮痛薬の投与により苦痛の緩和に努めるのですが、緩和しきれるものではありません。

それほどの苦痛を患者さんに与えながらも、有効な手段が見つからず、ただ状態が悪化していく現実を突きつけられ、悔しくて歯がみし、
「自分の行っていることは、果たして患者さんのためになっているのか、ただ苦しませているだけではないのか…」
と苦悩しました。

医療従事者としての自身の在り方が崩れ落ちそうになりながら日々の看護業務にあたっていました。あの当時のことは今も苦渋の記憶として残っています。


自分の本音と向き合った結果

苦悩のなかで、「誰のために、何のために働いているのか…」という自身の内面と深く向き合わざるを得なくなりました。

医療者として一番したいこと、一番嬉しいことは何であるのかを振り返るなかで、「患者さんが良くなっていく姿が見たい」という自分の本音が明確になっていきました。


人は誰しもいずれ寿命を迎えます。

どのような健康法や治療法を行おうが避けられないのが現実です。そうであれば、健康な時間を出来るだけ長く過ごしていただき、その人らしい生活を送れるための予防を重視する援助がしたい。
主体的に患者さんと関わり、予防医学に基づく治療に携わりたいという想いを無視することが出来なくなりました。

ただし、看護師の業務は、あくまで「療養上の世話」と「診療の補助」であり、患者さんに対して主体的な治療行為を行うことは法律上認められていません。

また、臨床現場で看護師が予防医学に基づいた援助の時間を確保することは困難であり、診療報酬の観点からも現実的ではありません。
そのため、看護職を辞し、予防医学を実践できる鍼灸師の道に進むことを決意しました。


前編はここまでです。次回は後編となります。

長文となりましたが、ここまでご覧いただきありがとうございました。
それでは、次回もよろしくお願いします。

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